紅葉の立山、剱岳縦走

 「山は友だち!」私が所属している山岳会のリーダーが、ことあるごとに強調する言葉である。今年(2002)は国連で定めた「国際山岳年」である。いつもの年と何も変わっていないけれども、今年が国際山岳年ということになれば、登山愛好家にとっては、何か変わった受け止め方があるのは私だけではないだろう。早くから9月に立山、剣岳の縦走を今年の主な山行きに決めていた。
  9月26日の早朝(6:52)、徳山駅でひかり352号に乗車した私達7名は、新大阪で特急サンダ−バ−ド11号の人となり、12:54に富山駅に到着。そこから地鉄で立山駅まで(14:30)、さらにケーブルカーで標高差500mの美女平まで急なスロープを7分間で駆け登る。

  立山駅の掲示板に「室堂(標高2450m)の天候」というお知らせがあるので、さすが山岳観光地だなと感心する。しかしその内容を見てびっくり。「天候 晴れ、 視界 良好、 気温 0゜C 本日の必需品 防寒具」と書いてある。3000m級の山登りなので、一応防寒の用意はしているが、このお天気の、この時間に気温0゜Cを見て、自分の用意の不十分さを後悔した。

  美女平(977m)発15:20のバスは3:33に称名の滝が見える所、3:52に弥陀ケ原(1930m)、16:04に天狗平(2300m)を経て終点の室堂に16:10に到着する。外に出てみると心配していた気温もそれほど寒くなく、先ほどの「気温0゜Cは何だったのだ」とほっとする。

  室堂ターミナルを出ると、前の玉殿湧水の名水を飲んで記念撮影、周囲の山が逆さに映っているミクリガ池を経て、どんどん地獄谷へ下りていく。鍛冶屋地獄のあたりは、蒸気やガスが吹き出しており、136もの地獄があると言われている。

  私達が最初の夜と第3日目の夜を過ごす宿、雷鳥沢ヒュッテに到着したのは4:52であった。立山にはいろいろな山小屋やホテルがあるが、温泉があるのはこのヒュッテだけである。(1泊2食付きで9000円)(海抜2350m)

   第2日5時30分起床、6時朝食、6時30分出発。山小屋の前に聳える大日連山が美しい。先ず室堂の方へ上ることになるが、昨日下った道とは違う道を進む。

 雷鳥荘(6:55)、室堂山荘(7:24)、遊歩道の周囲の草木もすべて紅葉の真っ盛り。この色をこのまま持ち帰って見せてあげたい気持ちである。でもそれも叶わぬことで、無理とは思いながらも、ついデジカメのシャッターを切る。

      

  室堂からはその裏手に当たる一ノ越に向かって登る。一ノ越山荘(2700m、8:14)で10分の休憩をとる。これからは雄山(3003m)、大汝山(3015m)、真砂岳(2861m)へと立山連山のアップダウンを北上することになる。

その為には先ず一ノ越から300mの標高差がある雄山を目指し、砂礫の道を登る。

 30分登った所で一休み(8:50)、9時に比較的なだらかな平地に到着。雄山に到着したのは9時25分であった。山頂には、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と天手力雄命(たじからおのみこと)を祀る神社がある。

  雄山を9時40に出発。これから次の山までは痩せた岩稜の尾根道で余り急なアップダウンはない。大汝山に着いたのは10:03で10分の休憩をとる。大汝山を出ると10:23に富士の折立を通過する。そこからしばらく下って、再度登り切ったところにケルンのある平地に到着。そこで休憩、お茶、軽食の時間にする。(10:58〜11:28)

       

  休憩をした所から5分ぐらい歩くと真砂岳の頂上であった。そこから下って行くと別山への分岐点(12:08、2780m)。正面には針の木が聳えている。最初の計画では、この分岐点から別山乗越を経由して、剣沢小屋に向かう予定であったが、お天気が余りにも良いし、早く山小屋に入っても仕方がないということで、別山に登ることにした。別山の山頂(2880m)に着いたのは12時20分。ここでゆっくり昼食をとる。正面には劔沢を挟んで明日登る剣岳へのルート(劔山荘、前劔、劔岳)がその厳しさを訴えている。そして眼下には今晩泊まる赤い屋根の山小屋が見える。右手には鹿島槍ガ岳、唐松岳、白馬岳が北に伸びている。昼食後のんびりと周囲の景色を眺めながら、楽しい歓談をし、更に 別山岬(北峰)まで散策して戻る。

    

   別山山頂の散策が終わり、1時30分に下山開始、2時には山小屋の少し上まで下りたが、まだ小屋に入るのは勿体ないと、10分ばかり周囲の草花と戯れる。そして剣沢小屋(2415m)に到着したのは2時38分であった。

     

   第3日目は雨で明けた。5時30分から朝食。雨の中を剣岳に登るのは不安もあったが、「ガスがなく、見通しが良いので大丈夫」とのベテランリーダーの言葉に勇気づけられた、一行は雨具で武装して6時5分に出発する。剣山荘まで下ってここで一休み(6:30)、雨は遠慮なく降る。

  しばらくは緩やかな登りであったが、いよいよ岩場になる(6:46)、一服劔を越える(7:05)。行く手には前劔がそそり立つ。ここまでも大岩の急登であったが、これからは更に急になる。お互いに安全に気をつけて、3点確保で慎重に這い上がる。

  前剣の山頂到着(7:57)、頂上を越えて8時過ぎから、雨が止み、明るくなる。狭い岩稜を下ると、いよいよ鎖場の難所(8:50)、これから鎖を頼りに這い登ったり、ぶらさがっておりたり、スリル満点。
 9時5分に天下に名高い蟹の縦バイ。でも雨もあがり、ボルトや鎖がしっかりしているので、気を付けて登れば案外楽に登れた。剣岳山頂到着(2998m、9:32〜9:50)、頂上には登山途中私達を追い越した若者が一名すでに食事をしている。私達は早速三角点にタッチし、互いに握手して登頂できたことを喜びあった。

  そして写真を撮りあったり、頂上神社にお参りしたりして、軽食をとる。そして若い男性登山家が下山するので、お願いして私達一行の集合写真を撮って貰う。

 写真撮影が終わると、我々も下山開始、早月尾根への分岐を過ぎると、10時5分に蟹の横バイ、横バイは縦バイより難しい感じ、特に最初の足をどこに置くかが問題。お互いにポイントを教えあいながら進む。岩場を下ると割り合い平坦な道になる。平坦な道をしばらく下っていると、ガスが晴れ始める(10:30)。そして視界が開け、急に青空になる。一行は大喜びでカメラのシャッターを切る(10:45)。振り返れば劍岳がすぐそこに聳え、遠くには鹿島槍から五竜、唐松、白馬の方まで見え始めた。眼下にはナナカマドなどの紅葉の山肌が美しく輝いている.

     

  11時に前剣を通過、また小雨が降り始める。山の天気は本当に変わりやすい。少しでもガスが晴れたら、素早くカメラを構えなければタイミングを逸する。

一服剣の前(11:40)。これからまた急な岩場を這い登らなければならない。

  一服剣の頂上到着(11:50)。これを下れば後はもう安心である。遥か前方下に見える赤い屋根の剣山荘を目指して瓦礫の道を下る。剣山荘に到着すると玄関前でスナップ写真(12:14)。これから少し下って、再び剣沢小屋に向かって登るが、この最後の登りは前からの雨、風で中々進まなかった。剣沢小屋到着(12:55)。

  剣沢小屋ではまず、雨具をとり、食堂に入って暖かい鍋焼きうどんで昼食、休憩。

   休憩が終わると14時10分に剣沢小屋を出発。相変わらず雨、風、ガスで歩きにくい。お互いに足下に注意しながら別山乗越を目指して登って行く。15時に剣御前小屋に到着。トイレ休憩と買い物。一休みした一行は風雨の吹き付ける雷鳥沢を下りはじめる。眼下に雷鳥沢ヒュッテやキャンプ場が見えるが、この下りは長い。雨の下り坂は十分気を付けなければならない。

  16時に雷鳥沢を下りきり、浄土川を渡って雷鳥平に出る。これからは遊歩道、最後の登り道を登りきって、雷鳥沢ヒュッテに無事到着(16:20)

 互いに楽しい縦走登山を無事に終えられたことを喜びあい、感謝しあった。

  第4日目5時起床、朝食(5:45)、6時10分に雷鳥沢ヒュッテを出発、一昨日の朝登った遊歩道を上る。7時に室堂バスターミナルに到着。7時45分にトロリーバスで大観峰へ向けて出発、8時10分にロープウエイで大観峰を出て、黒部平へ向かう。お天気は良く晴れて紅葉が美しい。

  8:30ケーブルカーで黒部ダムへ向かう。黒部ダムは丁度放水しており、その飛沫に虹が美しく輝く。カメラマンは忙しくシャッターを切る。

9:05黒部ダムを4両編成のトローリーバスで扇沢へ向けて出発する。15分で扇沢に到着。観光バスは相変わらず次々に入る。この辺りはまだあまり紅葉していない。

 9:55発のバスで信濃大町へ、それから10:37の電車で松本駅へ、11:32に松本駅到着。時間があるので、駅周辺を散策して昼食を買い込む。

 12:40しなの12号で名古屋駅へ(14:41)。15:03の新幹線は広島で乗り換えて18:33に徳山駅に無事到着。

 国際山岳年の夢のような大縦走登山は大きなお土産と成果をもってここに終了する。これも偏にリーダーを始め、7名の良いチームワークのお陰である。お互いにお礼の言葉をかわしてそれぞれ家路に着いた。

  
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