後立山縦走ー3年越しの夢実現

八方尾根〜唐松岳〜五竜岳〜鹿島槍ヶ岳〜爺ヶ岳〜柏原新道

2005年8月19日〜23日

 「岩,花、残雪のアルペンコース」というキャッチフレーズで売り出している「後立山縦走コース」は以前から是非挑戦したいと思っていたコースである。だから3年前に我々の山の会がこのコースを計画した折りにも、いの一番に申し込みをした。ところが会の事情で中止になり、残念い思っていた。別の山の会で、この逆打ちコースを計画して登った折には、途中で妻が足を痛めた為、結局二人で別行動をとって、種池山荘と冷池山荘に泊まって鹿島槍ヶ岳まで登り、赤岩尾根を下った。この下山の折り高千穂平から見上げる鹿島槍ヶ岳の勇姿は格別であった。(次の写真2葉は平成11年7月末、下山の途中に撮影したもの)
 この度、3年越に後立山縦走コースが計画されたので、「今度こそ八峰キレットを」の熱い思いで直ちに申し込みをした。

一行12名は8月19日20:03徳山駅発の「こだま684号」に乗り込み、広島駅で「ひかり482号」に乗り換えて、新大阪駅に22:20に到着した。それから大阪駅まで引き返して、寝台特急「きたぐに」に乗り込んで車中泊。

 第2日目の20日は糸魚川駅を6:19に出て、白馬駅に7:48に到着する。ここで3台のタクシーに分乗した一行は、途中買い物をして黒菱平に8:30に到着した。これからゴンドラとリフトを乗り継いで八方池山荘(1830m)までシモツケソウ、ワレモコウなど高山植物を眺めながら上って行く。8:40にリフトを降りると各自身支度や準備運動をして、9:05にいよいよ出発だ。

 タクシーの運転手は「今は夏の花は終わり、ちょうど端境期。もう少ししたら秋の花が咲く」と言ったが、コバイケイソウ、タカネマツムシソウ、カライトソウなど、結構いろいろな花が咲いている。勿論チングルマは花が終わって綿毛の状態である。9:40に石神井ケルンで小休憩。9:58に第2ケルン(2035m)で休憩する。

 10:13八方池の上にある第3ケルンで10:20まで休憩をする。ガイドブックによると、この当たりから白馬三山や不帰の嶮の眺めが素晴らしいということだが、今日は残念ながらガスがかかって景色は見られない。唐松岳頂上山荘のホームページには八方池に映った逆さの北アルプス後立山連峰の素敵な写真が載っている。このような写真を撮るのが夢であったのだが、、、。 

 今日はガスがかかっているので、八方池の周辺まで降りて行っても良い写真は望めない。一行はこれから痩せた尾根を登って行く。

しばらく登り、下ノ樺から上ノ樺を越えて行くと、11:18に雪渓のある岩平(2280m)という広場に出た。ここで11:40まで休憩と食事の時間である。食事をして休んでいると、ボーイスカウトの大団体がやってきて、雪渓を滑って遊んだり、弁当を開いたりし始めた。ここは丸山の下にあたり、残雪があるので、涼しく休憩に良い場所である。

 休憩が終わると。三叉路を右に登って行く。12;10に丸山ケルンに到着して10分間の休憩をとる。丸山の山頂はひろびろとしている。350度展望が良い。この山を越えれば、後は岩稜の痩せ尾根を下ることになる。しばらく下ると唐松岳頂上山荘の赤い屋根が見えてきた。今日の宿泊地である。到着は13:22であった。12名全員無事にお宿入りである。休憩を入れて約4時間20分。

 私達の部屋は新棟で中央に通路があり、両側に二段の部屋が並んでいる。足下の上に荷物置きの棚があるので、便利である。私達は上段に上がり、敷き布団が5枚の所に4名で寝ることになる。今日はゆったりできるなあと思っていたら、途中で会ったボーイスカウトの団体がゾロゾロと入って来て、奥の部屋へ入って行った。これは大変なことになるぞと心配していたが、さすがボーイスカウトである。夜も静かで、便所のスリッパもきちんと揃える。むしろ我々大人の方が教えてもらうことになる。

 一応部屋割りにそって、各自が落ち着いたところで、唐松岳に登ることにした。14:50に頂上小屋を出発して、なだらかな登山道を北西に向かって登ってゆく。途中コマクサが沢山見られたが、やや時間がたち過ぎて写真に撮るには気の毒な状態である。唐松岳山頂(2696.4m)到着は15:15であった。全員集まって無事登頂の万歳三唱をした後、各自写真を撮ったり、周囲の山の名前を確認しあったりして、16時頃まで剣岳、立山連峰が雲から姿を現すのを待った。しかし少し晴れても全容を現すまでにはいかず、良い写真は撮れなかった。夕食時間が決まっているので、15:57に下山開始。16:16に宿に帰り、食堂に行くと、まだ準備中である。17時にようやく美味しい夕食にありつけた。

 夕食が終わって、夕日を見に頂上山荘の裏山に登ろうということになった。それまでにはまだ時間があるので、仲間は一応部屋に帰ったようである。自分は折角この素晴らしい自然環境にいるのだから、少しでも多く周囲の様子を見ようとゆっくりと裏山に登った。そこには数名の人が登っていた。17:30頃に愛知の人、東京の人などと話していると、「わっ、モルゲンロートだ!」(正しい名前はブロッケン現象)という叫び声がした。見ると東側の絶壁のはるか向こうに大きな虹のような輪があり、その中に自分の姿が映っている。みんな両手を大きく開いて鳥の羽のように上下に動かしたりしている。すると向こうに映っている自分の影も同じように手を動かす。我々の歓声を聞いたり、おかしな動作を見た人たちが段々と登って来て、何何と興味をもってはしゃぎだした。しかしそれも長くは続かなかった。私の仲間が登った頃には太陽に雲がかかって、ブロッケン現象は見られなかった。みんな残念がっていたが仕方がない。これが自然現象だ。しばらく待ったが、夕日は見られなかった。雨がぱらぱらと落ち始めたので、私は一足先に宿に戻った。(18:20)

 第3日目の21日は、4時起床、身支度や部屋の後片付けをして4:50に出発。天気も良し、唐松岳の方に遥拝に向かうグループもあるが、我々は無駄な時間はとれない。今日が一番長いコースである。五竜岳の方に南下する。5時過ぎに牛首に登るともう朝日が昇りそうになった。写真撮影のためにしばらく休憩をとる。5:10に写真撮影が終わって再びトレッキング開始。5:20に険しい鎖場を通過する。岩稜と鎖の連続だ。5:30に一応険しい岩場が終わった感じ。しばらく南下を続けていると鞍部(2325m)に出て来た。これが最低鞍部かと思って、我々はここで6:25から6:45まで朝食、休憩をとる。

 朝食後,再び岩稜を登り、しばらく下っていると、曲り角に遭難の碑を見つけた。若い自衛隊員の遭難であった。この時期で今日のように好天気なら、遭難の心配ないが、やはり3月ならば、雪もあり、大変だったのだろう。黙祷。

 大黒岳を下って7:05に本当の最低鞍部(2300m)にやってきた。これから白岳まで登りである。前方に五竜岳の大きな山容が迫って来る。7:22から10分ばかり上の平(2355m)で休憩をする。ここには五竜岳と唐松岳の道標が立っている。振り返れば唐松岳や手前の唐松岳頂上山荘がはるか彼方にどっしりと座しているのが見える。

 ここからゆるやかな登りで、ゆっくりとハイマツの間を登れば良い。向こうを見上げれば白岳の右稜線を10名ばかり登山者が向こう側から登っているのが見える。7:48から7:55まで白岳の手前で休憩する。登るにつれて砂礫道になる。山頂の西側を巻いてしばらく進むと、8:10に遠見尾根コースの分岐点に出る。更に少し進み、下を見れば五竜山荘の赤い屋根が見えて来る。

 五竜山荘(2541m)到着は8:20であった。ここでトイレ休憩。山荘の裏にあるトイレは一つなので、全員が用達しを済ますには可成り時間がかかる。玄関の寒暖計を見ると摂氏14度である。これだからアルプスの縦走は心地よい筈である。熱くない、寒くもない温度とそよ風を受けて快適そのものである。昨日からトレッキングの途中「涼しくていいなあ」と何度言ったことか。この天然クーラーの状況をお土産に持って帰ることができれば。実に爽快な気分で楽しい山歩きができた。

 休憩を終えると、山荘の前から尾根の西側にある登山道を登って行く。上の写真で分かるように最初は緩やかな道である。しかし、9時少し前になると、急な岩稜の登りやトラバースになるので、9:05に2610mで、9:10に2630mで、9:27に2685mで、10時に2795mで休憩というように、度々休憩をとって、水を飲んだり、行動食をとったり、写真を撮ったり、また、来た道を振り返ったりしながら後立山縦走を充実させていった。途中に鎖場もあったが、気をつけて行けば心配ない。これを過ぎれば、間もなく五竜岳山頂への分岐点である。五竜岳山頂(2814m)到着は10:10であった。頂上で記念写真をとったり、万歳三唱をした後、岩場に気を付けながら下りて、分岐点で10:20から11時前まで昼食、休憩をする。

 これから岩稜の急な下りである。11:15鎖場(2700m)を通過する。この当たりからガスが少しずつ出て来て、11:28に先頭が立ち止まった。雷鳥だ。「静かに。大声を出さない」と互いに注意しあうが、興奮して耳に入らないらしい。一生懸命カメラに納めようとしている。私もできるだけ近付き、雷鳥の傍にいる女性に動かないように伝えて下の写真を撮ることが出来た。

 11:32に2660mの鞍部に到着。これからはアップダウンの尾根道である。11:46に再び雷鳥騒ぎ。今度は親子で3羽見える。11:55にG4(2630m)で休憩、更に12:28に休憩をとる。

 12:28に鎖場の下で休憩する。12:41に2568mで、13:10に岩場2535mで休憩する。

13:22に梯子通過。13:28にG5(2575m)で休憩。13:35に北尾根の頭(2580m)を通過する。これからしばらく緩やかな下りである。13:54に2400mで、14:11に2535mで、14:25に2415mで、14;46に休憩する。これからまた岩稜である。15:21に梯子(2455m)を下りて休憩する。キレット小屋の向こうにガスに煙る明日挑む八峰キレットが浮かび上がって見える。キレット小屋(2475m)到着は15:45であった。宿はサービスも良く、余り混雑していない。2段ベッドの上段に6名で寝る。

 第4日目の22日は4:30起床、小雨が降っている。この度の縦走で最大の難所である八峰キレットに挑戦するのだから、完全装備をして5:15にキレット小屋を出発する。小屋の裏から直ちに岩場で痩せ尾根の登りである。ウオーミングアップの助走路はない。出発前に良く準備運動をしていて良かった。再び下りると八峰キレットである。切り立ったような絶壁の細い足場を鎖を持って蟹の横ばいのように進んだり、梯子で底まで下りたり、登ったりと多種多様な障害物を乗り越えて行く。雨のせいもあるが、おそらく無我夢中で記録をとる余裕が無かったのだろう。メモ帳を見ると、出発後5:17に2540mで休憩だけ書いてある。

 幸い、雨も小降りで、鎖と梯子の八峰キレットを12名全員無事通過した。ここからは尾根の西側の道を鹿島槍ヶ岳を目指して長々と進む。やがて鹿島槍ヶ岳がガスの中から現れて来た。7:02に吊り尾根分岐点に到着する。ここで10分間の休憩をとる。

7:48に鹿島槍ヶ岳南峰頂上(2890m)に到着する。全員で集合写真を撮ったが、ガスで良いものは望めない。ここは平成11年に妻と一緒に登った所であるが、逆コースのせいか、それともガスがかかって周囲の様子がはっきりしないためか、まるで始めて立ったような感じである。前回は360度の大展望を満喫できたのだが、残念である。

 全員で万歳三唱をして、8時少し前に冷池山荘を目指し出発する。ここから砂礫の下り道になる。8:33に布引岳(2683m)を通過する。ここを越すと、緩やかな下りになり、ハイマツ帯からだんだんとダケカンバなどの樹林帯となる。東側には花が少ないとは言ってもお花畑があり、以前通った時の記憶を呼び起こした。9:38にキャンプサイト(2430m)通過。ここに来れば、もう山荘は近い。9:50に冷池山荘に到着する。ここでひとまず雨具を脱いで、キレット小屋で用意してもらったウナギ弁当の朝食、休憩である。

 

 冷池山荘は新しく改築されているが、玄関の看板は以前のままである。食事を終えた一行は玄関前で記念撮影をして、10:35に爺ヶ岳を目指して出発する。樹林の中を抜けて、10:55に赤岩尾根分岐点(2488m)に到着する。ここは冷乗越で前回はこれより大谷原へ下山したのである。

 これからは上りで、爺ヶ岳の西側を巻くような登山道を進む。11:50頃からだんだんと晴れて来た。鹿島槍ヶ岳が姿を現し始めたので、しばらく休憩をして写真のタイミング待ち。12:10に2630mで休憩する。12:23に爺ヶ岳中央への分岐点を左折して、急な岩場を上り始じめる。12:33に爺ヶ岳中央峰頂上(2670m)に到着する。ここが爺ヶ岳で一番高い所である。全員で写真を撮り、万歳三唱をする。13:03に爺ヶ岳南峰(2660m)に到着して30分間昼食、休憩をする。ここまで来れば、もうここから緩やかなスロープを下って行けば、今晩の宿、種池山荘である。湯を湧かしてラーメンを作ったり、軽食でコーヒーを飲んだりして、ゆっくりとくつろぐことができた。これこそ山でのスローライフであり、至福の時である。

 休憩後、なだらかな下り道を西に向かって進み、14:15に種池山荘に到着した。私達の部屋は畳の間2間で、広い方に男性8名、もう一方に女性4名で泊まることになる。早速酒盛りを始めようとした所に、山荘の人が来て、「部屋での飲酒はしないでください」との注意を受ける。談話室が空いたので、12名全員が集まってビールを飲みながら楽しい反省会をする。

 第5日目の23日は、5時起床。昨日山荘に到着後、直ぐに乾燥室で雨具と登山靴を乾かしてもらったので、荷物の片付けが簡単である。。

 朝食後、5:50に山荘出発。これから柏原新道を扇沢まで下ることになる。途中、平らな所もあるが、急な下り坂、石畳(6:44)、一枚岩(7:05)、ケルン(7:34)などがある。

 8:26に扇沢登山口に到着する。そこからタクシーで大町温泉、薬師の湯で山男や山女から普通の人に変身する。その後、松本駅前のお店で、生ビールで楽しい山歩きを祝して乾杯をし、昼食。

 昼食、休憩後、松本駅発14:43の「ワイドビューしなの16号」で名古屋(16;47)まで行き、17:57発の「のぞみ27号」で徳山駅(20:44)に無事到着した。

 天候の関係で双耳峰の鹿島槍ヶ岳の勇姿を見上げることができなかったけれども、予定通りに大縦走を終えて、全員無事に下山できたことは本当に嬉しいことである。リーダー及びサブリーダー、そして暖かい仲間のチームワークのお陰と深く感謝している。

 来年は東北の山と言う声も出たが、、、楽しみである。

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